ケンブリッジに語学留学していた当時、週末になるとよくロンドンに小旅行していた。
移動手段は電車かバス。どちらで行っても良かったが、電車のほうが早いので電車でいくことが多かった気がする。
よく、海外の電車は怖い。寝るなんてとんでもない。といった話を聞くが、ケンブリッジーロンドンをつなぐ電車では、怖い思いをしたことは一度もなかった。
意外だったが、電車に乗ってくる人はみんな静かで、大きな声でしゃべりまくる人にはほとんど遭遇しなかった。
みんな、静かに窓の外を眺めたり、本を読んだりして過ごしていた。
ケンブリッジの駅には改札がなかった。チケットを買ってあとは勝手に乗るだけ。電車の中で車掌さんが回ってきたときだけ、チケットを見せればいい。
でも、その車掌さんに合うこともほとんどなかった。これ、チケット買わなくても大丈夫なんじゃないかな?と電車に乗りながらいつも思っていた。
ケンブリッジからロンドンまでの車窓を何度も眺めたはずだが、今となっては覚えている景色はほとんどない。
ロンドンの駅がどんなものだったかも忘れてしまった。
一番の思い出は、ロンドンでさんざん観光したあとに電車でケンブリッジへ帰ろうと駅についたら、最終電車が運行休止になっていたことだ。
「あれ?時刻表だとまだ電車あるはずだけどな…」そう思って、看板をよく読むと、今日はもう運行しない、と書いてある。
ヤバい!帰れない!
今まで海外で一番焦った瞬間だった。ロンドンで野宿はしたくない。
頭をフル回転させた。
他に帰れる方法は?バスがある。バスはどこから出る?今いる場所からバスストップまでどうやって行く?最終バスにまだ間に合うか?
いろんなことが頭を駆け巡った。
そして、持っていたバスの時刻表を調べ、最寄りのバスストップまでダッシュ。
幸いなことに、ケンブリッジまでの最終バスはまだ席がのこっていた。
セーフ。
無事バスに乗ってケンブリッジの家に帰ることができた。
もう、海外で時間通りに電車が走るのをあてにするのはやめようと思った。
海外では時間にゆとりを持った行動が大事だと、身を持って体験した出来事だった。
おかげで、その日の観光の思い出が頭からスッカリ抜けてしまって、終電を逃したことが一番の思い出となっている。